この記事の公開日: 2026年10月28日


この記事の著者
こばやし歯科クリニック|歯学博士 小林孝誌
東京歯科大学大学院卒業し博士号を取得。インプラント専門医を持ち、地元の日立市で地域に貢献できるように研鑽を積む。口腔ケアやホワイトニングが好きで実体験を皆様にお届け。
「歯ぐきから血が出るけれど、痛くないから放っている」。歯周病は、そのように軽く見られがちな病気です。しかし近年の研究で、歯周病は糖尿病や心臓病など、全身の病気と深く関わっていることがわかってきました。歯ぐきの炎症が血液を通じて全身に影響し、逆に糖尿病があると歯周病も進みやすくなります。
この記事では、歯周病と糖尿病・心臓病・そのほかの病気との関係、歯ぐきの炎症が体に影響する仕組み、そして歯周病治療で全身の健康を守る方法を、日立市のこばやし歯科クリニックがわかりやすく解説します。
この記事のまとめ
- 歯周病は歯ぐきだけの病気ではなく、糖尿病・心臓病・脳卒中・誤嚥性肺炎などとの関係が報告されている
- 糖尿病と歯周病は「お互いを悪化させる」関係。歯周病治療で血糖の指標(HbA1c)が改善したという研究報告がある
- 歯ぐきの炎症で生じた細菌や炎症物質が血液に入り、血管や臓器に影響するのが主な仕組み
- 歯周病は自覚症状が少ない。糖尿病・心臓病をお持ちの方は、症状がなくても定期的な歯周病の検査とクリーニングをおすすめ
目次
歯周病は「お口だけの病気」ではありません
歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨が細菌によって壊されていく病気です。日本では成人の多くが歯周病にかかっているとされ、歯を失う原因の第1位でもあります。
かつて歯周病は「歯が抜ける病気」としてだけ考えられていました。しかし近年、歯周病のある方は糖尿病や心臓病などにかかりやすく、逆にそれらの病気があると歯周病も悪化しやすいことが、国内外の多くの研究で報告されています。
歯周病と関係が指摘されている主な病気をまとめました。
| 病気 | 歯周病との関係(報告されている内容) |
|---|---|
| 糖尿病 | お互いを悪化させる双方向の関係。歯周病治療で血糖コントロールの指標が改善したとの報告 |
| 心臓病・動脈硬化 | 歯周病のある方は心筋梗塞や狭心症などのリスクが高いという関連が報告されている |
| 脳卒中 | 動脈硬化を介して、脳梗塞などとの関連が報告されている |
| 誤嚥性肺炎 | お口の中の細菌が気管に入ることで肺炎を起こす。高齢の方で特に注意 |
| 早産・低体重児出産 | 妊娠中の歯周病が早産などのリスクと関連するという報告がある |
| 認知症 | 歯周病菌や慢性的な炎症が関与する可能性が研究されている |
| 関節リウマチ・骨粗鬆症 | 炎症や骨の代謝を通じた関連が指摘されている |
これらの多くは「関連がある」という段階で、歯周病が直接の原因とまでは言い切れないものも含まれます。ただし、糖尿病については研究が積み重なっており、医科と歯科が連携して治療することが推奨されています。
歯周病と糖尿病は「お互いを悪化させる」関係

糖尿病と歯周病は、どちらか一方があるともう一方が悪化しやすい「双方向」の関係にあります。歯周病は、網膜症・腎症・神経障害などに続く「糖尿病の第6の合併症」とも呼ばれています。
糖尿病があると歯周病が進みやすい理由
- 細菌への抵抗力が落ちる:血糖値が高い状態が続くと、細菌と戦う白血球の働きが弱まり、歯ぐきの炎症が治まりにくくなります。
- 傷が治りにくい:血流が悪くなり、歯ぐきの組織の修復が遅れます。
- 口が乾きやすい:唾液が減ると細菌が増えやすくなり、歯周病もむし歯も進みやすくなります。
歯周病があると血糖コントロールが悪くなる理由
歯周病で炎症を起こした歯ぐきからは、TNF-αなどの炎症物質が血液中に放出されます。この炎症物質は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げる(インスリン抵抗性)ことがわかっています。その結果、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病が悪化しやすくなります。
歯周病治療で血糖の指標が改善したという報告
複数の研究をまとめた解析では、歯周病の治療を行うと、血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が平均で0.3〜0.4%程度改善したと報告されています。これは糖尿病の薬を1種類追加したときに近い効果ともいわれ、日本糖尿病学会のガイドラインでも、2型糖尿病の方に対する歯周病治療が推奨されています。
糖尿病の治療を受けている方は、お薬や食事療法とあわせて、歯周病の検査と治療を受けることが、血糖コントロールの助けになります。
歯周病と全身の病気との関係については、日本歯周病学会「歯周病Q&A」でも解説されています。
歯周病と心臓病・脳卒中(動脈硬化)

歯周病のある方は、心筋梗塞や狭心症などの心臓病、脳梗塞などの脳卒中にかかるリスクが高いという関連が、多くの調査で報告されています。
考えられている仕組みは主に2つです。
- 歯周病菌が血管に入り込む:炎症を起こした歯ぐきの血管から歯周病菌が血液中に入り、血管の壁に付着して動脈硬化を進めると考えられています。実際に、動脈硬化を起こした血管の壁から歯周病菌が見つかったという報告があります。
- 慢性的な炎症が血管を傷める:歯周病による炎症物質が全身を巡り、血管の内側を傷つけて動脈硬化を進めます。
また、心臓の弁や内膜に細菌が付いて炎症を起こす「感染性心内膜炎」は、お口の中の細菌が原因になることがあります。心臓の弁に病気がある方や人工弁の手術を受けた方は、歯科治療の前にお知らせください。
ただし、心臓病については「歯周病が原因で起こる」と断定できる段階ではなく、「歯周病のある方は心臓病のリスクも高い」という関連が示されている状態です。喫煙・高血圧・脂質異常症など、歯周病と心臓病に共通する危険因子の影響もあります。それでも、歯周病をコントロールすることが全身の炎症を減らす方向に働くことは確かで、心臓病の予防と治療の一環として、お口の健康管理が重視されるようになっています。
なぜ歯ぐきの炎症が全身に影響するのか
「歯ぐきの小さな炎症が、なぜ全身に影響するのか」と疑問に思われるかもしれません。ポイントは、炎症の面積の広さと血管とのつながりです。
- 炎症の面積は意外に広い:歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)は、すべての歯を合わせると、中等度以上の歯周病では炎症を起こしている面積が手のひら程度になるといわれています。これだけの面積に慢性的な炎症が続いている状態です。
- 歯ぐきは血管が豊富:炎症を起こした歯周ポケットの内側は出血しやすく、細菌や炎症物質が血管に入りやすい状態です。歯みがきや食事のたびに、少しずつ細菌が血液中に入り込みます(菌血症)。
- 細菌を飲み込む・吸い込む:お口の中の細菌は、唾液とともに胃や気管にも入ります。飲み込む力が弱った高齢の方では、これが誤嚥性肺炎の原因になります。
つまり、歯周病を放置するということは、「全身に細菌と炎症物質を送り続ける入口を放置する」ことでもあります。逆に、歯周病を治療して炎症を抑えれば、この入口を小さくできます。
歯周病セルフチェック ― こんな症状はありませんか
歯周病は、かなり進行するまで痛みがほとんどありません。次の項目に心当たりがあれば、歯周病が始まっている、または進んでいる可能性があります。
- 歯みがきのときに歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤い、腫れぼったい
- 朝起きたときに口の中がねばつく
- 口臭を指摘された、気になる
- 歯ぐきが下がって、歯が長くなったように見える
- 歯と歯の間に食べ物がはさまりやすくなった
- 歯がぐらぐらする、かたいものが噛みにくい
- 歯ぐきを押すと膿が出る
1つでも当てはまる方、特に糖尿病や心臓病の治療中の方は、症状が軽いうちに歯科で検査を受けることをおすすめします。歯周病の検査は、歯周ポケットの深さの測定・出血の有無・レントゲンによる骨の状態の確認を行い、保険診療で受けられます。
歯周病治療で全身の健康を守る ― 当院の歯周病治療の流れ

歯周病治療の基本は、原因となる細菌のかたまり(歯垢・歯石)を取り除き、炎症を抑え、その状態を維持することです。当院では次の流れで進めます。
- 検査・診断:歯周ポケットの深さ、出血、歯のぐらつき、レントゲンで骨の状態を調べ、歯周病の進行度を判定します。
- 歯みがき指導:歯周病治療でもっとも大切なのは、毎日の歯みがきです。磨き残しの場所をお伝えし、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスの使い方をお一人おひとりに合わせてご説明します。
- スケーリング(歯石除去):歯ぐきの上の歯石と歯垢を専用の器具で取り除きます。
- 歯周ポケット内の清掃(SRP):歯ぐきの中に隠れた歯石を、必要に応じて麻酔をして取り除きます。
- 再評価:炎症がどの程度改善したかを再度検査します。改善が不十分な部分には、歯ぐきの手術(歯周外科)をご提案することがあります。
- メインテナンス(定期的な管理):歯周病は再発しやすい病気です。3〜4か月ごとを目安に、検査とクリーニングを続けて良い状態を維持します。
糖尿病や心臓病をお持ちの方は、炎症を抑えた状態を保つことがそのまま全身の健康管理につながります。メインテナンスを「治療の終わり」ではなく「全身の健康を守る習慣」として続けていただくことを、当院では大切にしています。
歯周病治療は基本的に保険診療で受けられます。詳しくは歯周病治療のページをご覧ください。
糖尿病・心臓病をお持ちの方が歯科で伝えていただきたいこと
持病のある方が安全に歯科治療を受けるために、受付や問診で次のことをお知らせください。お薬手帳をお持ちいただくと確実です。
- 病名と現在の状態:糖尿病の方は、直近のHbA1cの値をわかる範囲で教えてください。血糖コントロールの状態によって、抜歯などの処置のタイミングを調整することがあります。
- 飲んでいるお薬:血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方は、歯石取りや抜歯で出血しやすくなります。自己判断で薬を中止しないでください。必要に応じて主治医の先生と相談のうえで処置を行います。骨粗鬆症の薬(ビスホスホネート製剤など)も、抜歯の際に注意が必要なお薬です。
- 心臓の病気の内容:心臓の弁の病気、人工弁、ペースメーカー、過去の心内膜炎などがある方は、処置の前に抗菌薬を飲んでいただくことがあります。
- 主治医の先生の病院名:必要に応じて、当院から主治医の先生に診療情報の照会やご報告を行います。
これらをお伝えいただくことで、安全に治療を進められます。「こんなことを言っていいのかな」と思う内容でも、遠慮なくお知らせください。
ご自宅でできる歯周病の予防とケア
- 歯と歯ぐきの境目をみがく:歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に当て、小さく動かしてみがきます。力を入れすぎず、やさしく丁寧に。
- 歯間ブラシ・デンタルフロスを毎日使う:歯周病は歯と歯の間から進みます。歯ブラシだけでは歯垢の6割程度しか落とせないため、歯間清掃用具を1日1回は使いましょう。
- 禁煙する:喫煙は歯周病を進ませ、治療の効果も下げる最大の危険因子のひとつです。糖尿病・心臓病の予防にもつながります。
- 血糖コントロールを続ける:糖尿病の方は、食事・運動・お薬で血糖を安定させることが、歯周病の進行を抑えることにもつながります。
- お口を乾燥させない:こまめな水分補給と、鼻呼吸を心がけましょう。口呼吸は歯ぐきの乾燥と炎症の原因になります。
- 定期的に歯科でクリーニングを受ける:ご自宅のケアでは取れない歯石やバイオフィルムを、3〜4か月ごとに取り除きます。
よくあるご質問
Q. 糖尿病があっても歯周病の治療は受けられますか?
A. 受けられます。むしろ糖尿病の方こそ歯周病治療をおすすめします。血糖コントロールの状態(HbA1cなど)をお知らせいただければ、処置の内容やタイミングを調整しながら安全に進めます。
Q. 歯周病を治せば糖尿病は治りますか?
A. 糖尿病そのものが治るわけではありません。ただし、歯周病治療によって血糖コントロールの指標(HbA1c)が改善したという研究報告が複数あり、糖尿病の治療の助けになります。医科での治療と並行して行うことが大切です。
Q. 歯周病の治療は保険が使えますか?
A. 歯周病の検査・歯石除去・歯周ポケットの清掃・定期的なメインテナンスは、基本的に保険診療で受けられます。費用は進行度や処置内容によって異なりますので、検査のうえでご説明します。
Q. 症状がなくても歯周病の検査は必要ですか?
A. 必要です。歯周病はかなり進行するまで痛みがほとんどなく、気づいたときには歯を支える骨が減っていることが少なくありません。特に糖尿病・心臓病をお持ちの方は、症状がなくても定期的な検査をおすすめします。
Q. 血液をサラサラにする薬を飲んでいますが、歯石取りはできますか?
A. 多くの場合、お薬を続けたまま歯石取りを行えます。出血への対応を準備したうえで処置しますので、自己判断でお薬を中止せず、受診時に必ずお知らせください。抜歯などの処置では、主治医の先生と相談して進めます。
日立市で歯周病のご相談はこばやし歯科クリニックへ

こばやし歯科クリニックは、茨城県日立市大和田町の国道6号沿い、川崎病院向かいにある歯科医院です。土曜日も診療しており、駐車場もございます。
歯周病の検査・治療・定期的なメインテナンスから、糖尿病や心臓病など持病をお持ちの方の歯科治療まで、必要に応じて主治医の先生と連携しながら対応します。「歯ぐきから血が出る」「糖尿病と言われたので歯も診てほしい」という方は、お気軽にご相談ください。
- 医療法人SHPI こばやし歯科クリニック
- 住所:茨城県日立市大和田町1883-1
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